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京都地方裁判所 昭和50年(行ウ)1号 判決

京都市下京区寺町通高辻下る京極町五〇四

原告

山本朝子

東京都千代田区霞ヶ関三の一の一

中央合同庁舎四号館

被告

国税不服審判所長

海野安昌

右指定代理人

新見忠彦

鳴海雅美

辻本勇

尾花政規

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和四九年一〇月三一日付で山本健一に対してなした審査請求を却下するとの裁決を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する被告の本案前の答弁

主文同旨。

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告の父である訴外山本健一は、昭和二二年二月ごろ財産税の賦課処分を受けたが、これによつて多額の現金等を徴収されたため、同人の長女で当時一八才であつた原告は、将来の生活設計に重大な悪影響を受け、幸福、健康を奪われた。そこで、右財産税の賦課処分が違法であることを理由に、原告が訴外山本健一の代理人となつて、昭和四九年五月二九日付で被告に対して審査請求をなしたところ、同年一〇月三一日付で右山本健一に審査請求の意思がないことを理由にこれを却下する旨の裁決がなされた。

2  しかし、右山本健一が審査請求に同意しないことを理由にこれを却下することは違法であり、また、右財産税の賦課処分が前記のとおり違法であるのに、これを不服としてなした審査請求を却下した被告の裁決も同じく違法であるから、同裁決の取消を求める。

二  被告の本案前の主張

被告は、原告に対して原告主張の裁決をなしたものではないから、取消すべき対象は存在しない。

第三証拠

一  原告

乙第一ないし第三号証の成立は認める。

二  被告

乙第一ないし第三号証を提出。

理由

成立に争いのない乙第一ないし第三号証によれば、原告は、その父訴外山本健一が昭和二二年二月ごろ受けた財産税の賦課処分を不服として同四九年五月二九日付で被告に対し審査請求をするについて、同訴外人の代理人となつてその請求をしたこと、これに対して、被告は、右審査請求が原告の独断でなされ、本人である訴外山本健一には審査請求の意思が全くないことを理由に、これを却下する旨の裁決を同訴外人に対してなしたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によれば、被告のなした本件裁決は訴外山本健一を名宛人とするものであつて、原告に対してなされたものではないから、原告は右裁決の取消の訴を提起する適格を有しない。

よつて、原告は本訴請求について原告適格を有しないから、その余の点につき判断するまでもなく不適法な訴えとしてこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田次郎 裁判官 孕石孟則 裁判官 安原清蔵)

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